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産業振興条例 商売と経済活性化の力に=大阪・吹田
商工新聞9月6日付で、吹田の産業振興条例の取り組みが紹介されました。
さまざまな商店が軒を連ね、買い物客でにぎわ
う吹田市内の商店街
 地域経済の活性化などを目的に、全国の自治体で制定が進む中小企業振興基本条例。大阪府吹田市では、吹田民主商工会(民商)の独自の条例案も生かされ、09年4月、「吹田市産業振興条例」として施行されました。それから1年5カ月。吹田市を訪ねてみると…。

地域で生き抜くバックボーンに
 「条例は商店街振興にとって大きなバックボーンになっています」。こう話すのは、地元で40年以上、スポーツ用品店を営む旭通商店街協同組合の谷本英洋理事長です。
 フランチャイズ店も含め個店が、商店会に加入するよう努力することが条例に書き込まれたからです。
「条例は商店街振興のバックボ
ーン」と話す谷元理事長
 商店街にとって大事なのは、空き店舗をつくらず連動性を維持すること。それだけに組合の未加入問題は大きな課題となっていたのです。
 「条例は強制ではないが、加入するよう努力を促している。大きな変化です」と谷本理事長はいいます。
 「大手さんは商売がうまくいかなければ『はい、サヨナラ』で商店街を出るだけ。私たちはそうはいかない。地域に愛着を持ってここで生き抜いていくしかないんですよ」

受注増やそうと企業紹介サイト
 条例審議にかかわるなかで「地域を見直した」と話す社長もいます。吹田市江坂町でコンサルタントを行う有限会社総合システム研究所の高木学さんです。
 大阪府中小企業家同友会北摂支部長でもある高木さんは、条例を審議した「市商工業振興対策協議会」(協議会)のメンバーの一人。
「条例は地域で生きていける土台
となっている」と話す高木さん
 議論にかかわる中で江坂地域でも廃業率が創業率を上回っていることにびっくり。今では「江坂が好き」を合言葉に、創業支援・事業者の定着や中小企業者の受注機会の増大などを目的とした企業紹介サイト「江坂-大阪どっとJP」を開設しています。

条例制定までの議論の積み上げ
 商店主、中小企業の「地域を見る目」を変えてきた吹田市の産業振興条例。その背景には、協議会の長期にわたる議論の積み上げがありました。
 吹田市で条例制定の議論が始まったのは3年前の07年8月。審議の母体となった協議会が、20回近い審議を重ねたことを踏まえ、市議会は09年3月、全会一致で条例を可決。4月1日に施行しました。
 その条文は、担当した市産業労働にぎわい部の江原眞二総括参事が「小さなところまで含めると、50回以上は書き直した」と語るほど、練りに練ったもの。先の高木社長も「いろいろな人の意見を取り入れたのが吹田の条例。一つひとつの言葉に意味や思いが込められている」と強調します。例えば企業誘致を行う場合に「地域経済の循環と活性化に資する」ことを明記したのも大きな特徴です。

民商の提案で施策の実現も
振興条例の具体化等について話し合う
吹田民商のメンバー
 吹田民商は、条例制定の審議が始まった直後に独自の条例案を提案。協議会でも積極的に発言してきました。協議会メンバーの井上かず子さん(市消費者団体協議会委員)は「民商さんは議論の肝心なところで発言してまっすぐな条例になるよう努力されました」と高く評価します。
 条例の議論と並行して、民商が提案してきた、JR吹田駅周辺のまちづくり協議会の設置や就労支援組織「ジョブカフェ吹田、ジョブナビ吹田」なども次々と実現されました。

全事業所調査と三つの専門部会
 条例制定後、今年1月には市が全事業所を対象にしたアンケート調査を実施。回収率は20%(約1600社)にとどまったものの、具体的な要求が見えてきました。事業所の3分の2が、この3年間で売り上げが「減少」したと回答したほか、国や自治体に対する要望として「無担保・無保証人融資枠の拡大」(25%)、「国保料の引き下げ」(23%)、「消費税の引き下げ」(20%)などが大きな割合を占めていることも明らかになっています。
 さらに条例の具体化を協議する三つの専門部会((1)全事業所実態調査(2)企業誘致・創業支援(3)商業の活性化に関する要領・要項制定)を協議会の下に設置。その検討が始まっています。
「条例の具体化を図りたい」と話す
吹田民商の村上副会長

条例の具体化へ幅広く意見交換

 一方、民商はじめ多くの業界団体が要望してきた官公需の地元発注率はいまだに5割を切っているのが実態。先の江原参事も「具体的な課題はまだまだ模索・研究中」とし、条例を生かす運動は緒についたばかりです。
 市内で縫製業を営んで14年になる吹田民商副会長の村上一郎さんはいいます。
 「最初のころは難しくて条例と自分の商売に距離があった。大事なのは、条例を商売や経営にどう生かすか。民商の中はもちろん、業界団体の人たちとの意見交換を通じて具体化を図っていきたい」




▼地域経済振興条例
 名称はさまざまだが、理念を明確にし、地域づくりの主体として中小企業・業者を位置づけ、自治体や中小企業、大企業、市民などの役割を明記した条例。産業振興ビジョンなどと違い、首長や担当職員が交代しても継承される。1979年に東京都墨田区で初めて制定され、これまで55自治体(10年2月、全商連調べ)に広がっている。

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