先週号でお知らせしたように吹田税務署が行った「預金差押」問題で、吹田民商は11月15日に、村上一郎要求部会長名で「人間的な『温かみ』のある滞納整理業務の推進を求める請願書」を提出しました。そして、17日、税務署へ出向き再度話し合いをもちました。税務署は、預金の返還ついては法的な根拠がないという理由で解除を拒否しました。これは、「特に納税者からその納付すべき国税につき即時に納付することが困難である旨の申し出等があった場合には、その実情を十分に調査し、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るように配慮する」とした国税庁の通達(「納税の猶予等の取扱要領」1976年)に違反した行為です。Aさんは与謝野大臣(当時)の答弁も示して交渉しましたが、税務署は「(大臣答弁に)左右されない」とも回答しました。これでは法治国家とは言えません。Aさんが8月、9月と税務署へ出向き実情を説明している際、その話を聞いた署員がこの通達に即して仕事をしていなかった反省も一切でてきません。請願書を提出して明らかに変化したのは職員の態度です。統括官も広域調査官もAさんの主張に耳を傾け丁寧に対応しました。常日頃、このような態度で接していただくと、今回のような「差押」問題は起きなかったのではないかと思われます。Aさんは2008年に民商の援助で納税の猶予申請をしたことがありました。その効果もあり、数十万円だけは戻ることがわかりました。
以下、今回の請願内容の要旨を紹介します。請願項目は4点です。
第1は、滞納者の実態を正確に把握し、納税者の利益になる事項を進んで知らせてほしいことです。Aさんは、8月、9月と連続して貴署に出向き、得意先2件(1件は倒産、1件はその得意先のひとつ上の会社が倒産し、得意先も売掛金が回収できず、Aさんに支払うことができない状況である)から売掛金が回収できない実情を詳しく説明し、1件については相手弁護士から届いた文書を見せています。(中略)貴署はこの時点でAさんに対して「納税の猶予」を申請することができることを助言する必要があったはずです。(略)
第2は、貴署の職員は該当法令だけではなく、日本国憲法、税務運営方針、国会における政府答弁、国税庁の「滞納整理における留意事項」(2001年6月1日)等を踏まえて適正な業務を行っていただきたいということです。日本は民主主義の国であり法治国家です。担当職員の感情で業務を行っていただいては困ります。国税徴収法だけでは具体的な事例に対応できないことが多々あるはずです。また、行き過ぎた「拡大解釈」等で問題も起こります。そのため、税務運営方針や「滞納整理における留意事項」などの文書が発表されたり政府答弁がされたりしているわけです。(略)
第3は、「滞納している者が悪い」という前提に立つことなく、滞納者の実情をよく把握するとともに、相談の経過を踏まえた対応をしていただきたいということです。(略)Aさんは差押を受けてからすぐに貴署に出向き、その預金が人件費であることを詳しく説明しています。2009年2月24日、当時の与謝野馨財務相は「差押禁止財産」について「租税債権よりは(労働債権)先取特権がある(という主張もありえる)とした上で、「(国税徴収法などの)法律の適用は、厳格に規範どおり適用するということのほかに、妥当性、例えば社会的妥当性、そういうものが法概念として必要なんじゃないか」と答弁されていますが、Aさんが貴署にお願いしたのは、この大臣答弁と同じ内容のものです。貴署は、預金を差し押さえた段階では、この使い道を知らなくても、Aさんの来訪を受けて、その説明を受けており、大臣答弁に沿って、返還する決断をすることはできたはずです。差押の判断は売掛金が回収できないとする事実を知っていながら相談経過を無視しており、換金についても、人件費であるとの実情を無視しての行為となっています。このような法体系を無視した対応は是正されなければなりません。
第4は人間的な温かみのある吹田税務署になっていただきたいということです。徴収担当統括官は、個人の滞納税額は差押によって解決したので、次は法人の滞納分を早く納めるようにAさんに迫りました。それも年内に全額納付する計画書を持ってくるように迫りました。「これからもガンガン回収していきます」、「わけのわからない納付計画書を持ってきてもらっても困ります」と勝ち誇ったような口ぶりでした。「税金を滞納するものが悪い。なにをやってでも税金を回収する」とする思想が根本にあります。ここには、Aさんやともに働いている皆さんにも生身の人間としての生活があることを思考する姿勢がありません。これでは税務署は相談窓口とはなりません。相談窓口としての資格が問われます。(略)
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