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吹田市長  阪口善雄 殿
官公需の地元優先発注、中小業者の仕事起こしを求める要望書
2011年2月14日
                          吹田民主商工会
                          会長  山口 正史
 貴職に於かれましてはご清栄のこととお喜び申し上げます。日頃は住民生活の安定のためにご尽力いただき感謝を申し上げます。
 さて、吹田市議会は昨年12月、吹田民主商工会と8団体、5名の団体代表者が個人の資格で請願した「官公需の地元優先発注、中小業者の仕事起こしを求める請願」を採択しました。この結果を受け、市当局がこの4つの項目を全面実践していただきたく要望書をまとめました。以下、4項目の実現に向けて具体的な提案を行います。ご検討くださるようお願い申し上げます。

Ⅰ 前提となる考え方について
(1)官公需の市内中小業者優先発注が大幅に下落していること

 吹田市官公需の市内中小業者への発注割合は、2009年度で件数では41,5%、金額では28,4%となっています。国は2009年「中小企業者に対する国等の契約に関する方針」で、中小企業者向けの契約目標を53,1%(2010年度は56,2%)にしていましが、ここから見ても極端に低い実態です。2009年度の大阪府の実績でも金額で63,0%(都道府県レベルの平均は75,9%。岩手県や高知県、宮崎県は90%台)ありますから吹田の低さは極端です。吹田市官公需の金額ベースの実態は「工事」で2000年度に75,2%あったのが、2009年度には27,1%に激減しています。「物品」は10年間で12%台~20%で推移し、「役務」は2007年度から前年より10%も減って35%台に低下しています。これでは吹田の中小業者に仕事が回らず、雇用も拡大させることなどできません。「吹田で起す仕事は吹田の中小業者へ」を合言葉に、少なくとも国基準まで早急に引き上げる手立てが必要です。

(2)中小企業、中小業者が「仕事を求めている」事実を踏まえること
 吹田市が2010年1月に実施した全事業所実態調査(1556事業所、回収率20,8%)によると、「ここ3年の売上高」については、「減少」が1005事業所66,6%で、「増加」と回答したのは140事業所9,3%しかありませんでした。9人以下の事業所では「減少」が70%を占めていました。「減少幅」は「3割以内」が9人以下の事業所で64,9%、10人以上の事業所で84,0%、「減少幅が5割超」は、9人以下の事業所で15,9%、10人以上の事業所で4,0%となっています。規模の小さい事業所ほど売上高の減少が著しくなっています。業種別では飲食業が82,5%と「減少」が酷く、製造業65,5%、卸・小売業64,7%、運輸業63,6%、サービス業61,1%と続いています。このような実態を受けて、「国、大阪府、吹田市に対する要望」として、135事業所が「市場開拓の支援」を、129事業所が「仕事のあっせん」を挙げています。建設業では回答者の20,5%が「仕事のあっせん」と回答されています。

(3)中小業者の社会的な役割を認識し、大きな企業に対する施策と中小企業、中小業者の施策を「棲み分け」すること
 中小企業基本法では、中小企業者という「括り」だけではなく「小規模企業者」という「括り」を設定するととともに「必要な考慮を払う」ことを求めています。「吹田市産業振興条例」においても同様で「小規模企業者の経営の状況に応じた支援を図る」ことを産業施策の方針として掲げています。これは日本(吹田)の中小企業者の圧倒的多数がこの層で占められている事実を法律が無視できなかったことによるものです。ところが、この層の経営が大変厳しい状況下に追い込まれているのが現在の特徴となっています。吹田市が行った全事業所実態調査においても9人以下の事業所が大変厳しい状況にあることが鮮明になっています。売上を「減少」させているのが70%、そのうち「5割以上の減少」が35,1%を占めています。「借入金」は56,5%が行い、そのうち「順調」に返済しているのは48,0%しかありません。資金繰りが「順調」なのは24,2%だけです。ここで注目する必要があるのは9人以下の事業主の28,3%が「社会的な活動」に参加していることです。それも、「自治会・町内会」「PTA、子ども会」「消防団」「防犯協会」などの地域密着活動に、そのうちの44,7%が参加しています。中小零細業者は経済活動の面だけではなく、まちづくりの担い手としても大切な役割を果たしています。この小規模企業者を吹田市が官公需や仕事起しで「支援」していくことは地域経済を振興させるとともに、住民生活の安心安全を支える基盤づくりにも貢献するものであることを認識する必要があります。

(4)地域経済を循環させることが中小企業、中小業者を安定させて、市も財政的な出動が少なくてすむこと
 吹田市産業振興条例は「地域経済の循環と活性化を図」ることで「就労機会の増大」や「安心安全な市民生活」の確保に資することを目的としています。現在の吹田市官公需の実態は、市外業者に多くが発注されているため経済が「循環」しているとはいえません。市外の事業者に低額で官公需を発注しても、その事業者は吹田市に税金を納めることにはなりません。出費は抑えることができたかも知れませんが、税収(保険料も)を増やすことには貢献しません。若干高くなったにしても市内業者に仕事を回すことで、お金が循環して税金(保険料も)となって返ってくるようにしなければなりません。私たちが主張しているのは①官公需を市内中小企業、中小業者優先発注に切り替えること②とりわけて中小業者(小規模企業者)に仕事が回る仕組みをつくることです。そうなれば地域経済が循環して活性化するはずです。それが経済だけではなく住民生活の安心安全に貢献します。中小業者の暮らしを安定させることができれば生活保護を初めとした財政的な出動も少なくてすむはずです。中小業者へ仕事を回して側面から支援することは社会政策上も必要な施策です。

Ⅱ 項目ごとの具体的な提案について
(1)請願事項第1項目「官公需の地元発注割合を件数だけではなく金額の面でも大幅に高めるとともに、分離分割発注を徹底することで、より多くの地元中小企業・中小業者に仕事が回るように改善すること」について
  
 重要なのは「件数だけではなく金額の面でも大幅に高めること」と「分離分割発注を徹底」することを求めた請願が採択されたことです。この内容を実行するために、前述したように、少なくとも早期に国基準以上に到達させるために必要な方向性を確実に打ち出していただくことを要望いたします。
 第1に、既に発注された官公需については、この請願の内容を受注者に伝えて極力、この趣旨が尊重されるような官公需にしてもらうことです。下請に回す場合は吹田の中小業者を使うことや材料等の仕入をする場合は吹田市内の中小業者からから購入することを要請してはどうでしょうか。
 第2は、既に確定している官公需の優先順位を再度見直しすることです。「工事」部門が金額の面で激減しているのは大型工事が並行して進められていることに原因があるようです。大型工事の優先順位を凍結も含めて検討しなおすべきです。
 第3は、今後は分離分割発注を更に強化する必要があります。先日、「物品」の納入状況を担当課から教えていただきましたが、吹田市内全域に短期で納入できる能力が求められているとの説明でした。これでは、多くの地元の中小業者は初めから除外されているようなものです。官公需は地元中小業者を育成することも役割としているはずです。心配しているのは、市が分離分割を行うと金額が高くなるという観念をもっているのではないのかということです。中小企業庁が発行している「官公需契約の手引き」には「分離・分割発注に係る適切事例」が紹介されています。そこでは、コスト削減ができたり、職員の資質向上につながったり、それぞれの請負契約者の数々のノウハウが発揮されたりするなどとした「効果」があったとされています。全ての部分でこのようにはならないかもしれませんが、「安さ」の基準だけで見逃していた「大切」なものを、分離分割発注にこだわることで発見していることは貴重です。全ての官公需の分離分割発注の可能性を追求するべきです。この部分では市職員の専門性が鋭く問われている問題でもあります。人材育成の方針も持っていただくことも強く要望します。
 12月市議会は小中学校と幼稚園のエアコン設置も決定されました。数社が独占することなく、市内中小業者の受注機会が拡大するようにしていただきたいと思います。
 第4は、仕事を起していく施策を充実させることです。吹田市の施設の多くが建替えであったり、改修であったりする時期を迎えていると聞いています。そうであれば、その優先順位を住民参加で検討していき、地域経済振興とも連動させて方向性を定めていくことが必要です。
 第5は学校や病院など吹田市に関係する施設等にも徹底させる必要があることです。ある米屋さんが「吹田市の学校給食なのに、どうして吹田市内の米屋ではなく、大阪市内の会社が入れるのか。自分の孫がお世話になっている。安全な物を入れるのは当たり前だ。」と怒っていました。これが普通の住民感情です。学校給食に於ける市内業者発注割合は2003年度10,4%、2004年度11,2%、2005年度9,8%、2006年度10,5%、2007年度12,1%といった実態(2008年10月28日決算審査特別委員会における久保学校教育部総括参事の答弁より)です。病院給食でも同様の傾向があるものと推察されます。保護者や入院患者から集めた給食費で運営されていながら、大半を「顔の見えない」業者から納入させている制度は住民感情からも受け入れがたいものです。山中副市長は、2008年10月28日の同じ委員会で「今、保育園の例も出されましたが、食材の地産地消ということで、市長も以前から市内業者の育成と生鮮食料品等々を含めて、地産で賄えるものは地産でやっていくための施策を打ち出そうと今、努力をいたしているところでございます。その方向に沿いまして、今やっていることで何ができるのかを含め方針は打ち出しているわけですから、検討させていただきたいと思います。」と回答されています。この方向性は正しいものです。ここでも校区や食材の種類などで分離分割発注することができれば地域経済の「循環」力を強めることができます。

(2)請願事項第2項目「予定されている市営住宅の建設については、原則として地元中小企業・中小業者優先発注とすること」について
 徹底して分離分割発注を行い、地元中小企業、中小業者のみで行うくらいの意気込みで行っていただきたいと思います。下請けも資材の購入先も市内中小業者、新たな雇用も吹田市内というくらい徹底していただきたいと強く要望したします。

(3)請願事項第3項目「全国439自治体で実施されている「小規模工事希望者登録制度」を創設すること」について
 この制度は競争入札資格を持たない小さな建設業者が小規模な建設工事や修繕、物品の受注機会を確保・拡大すること、それを通じて地域経済の活性化につなげようとするものです。吹田市は既に同様の制度を創設しているとの認識があるようですが、それは、①市外の事業者も登録できること②建設業の許可書を持っている事業者も登録できるなど、全国に広がっている「小規模工事希望者登録制度」とは異なる制度です。まずは、その認識を変えていただく必要があります。この制度の主眼は一般工事に登録される入札業者との「棲み分け」にあります。一定の金額以下の工事や修繕、物品の発注を、競争入札資格を持たず、市内に主たる事業所(本店)を置く小規模業者のみが登録する制度を創設することで、地域経済の活性化につなげようというものです。この理念がなければ「小規模工事希望者登録制度」とはなりません。
 小規模事業の金額設定はマチマチで、この制度を導入している自治体の半数以上が50万円となっています。埼玉県深谷市では、契約業者を選定する際は「原則として複数の業者との見積競争」を行い、10万円以上の工事については通常2社以上の合い見積もりを求めているそうです。それ以下は、全くの随意契約となっているそうです。請負代金は検査合格後30日以内に支払われ2年に1度の登録更新が行われ、「業務に関して不正又は不誠実な行為等があった場合は登録が取消」されるようにもなっているそうです。
 広島市では各行政区ごと、また、部局ごとに「小規模修繕発注状況」(資料参照)が発表されています。吹田市でもこのような実態を把握する仕組みを構築するべきです。また、この制度を創設する際に考慮していただきたいのは納税要件を緩和することです。税金完納を条件とするのではなく、分納計画書の提出でも可能とすることです。税金を滞納している中小業者に対しては工事代金の一部から滞納税金を納税してもらうシステムを導入することです。吹田市にとっても中小業者にとっても実利があるはずです。
 この機会に要望したいのは、この理念を「物品」分野にも拡大していただきたいと言うことです。10月1日から「市内業者優先発注」の試行が行われています。予定価格が80万円を基準とすることは示されていますが、それ以外の内容はこれから検討されるようです。私どもの会員からの情報では数万円規模の仕事でも市外業者との見積あわせがあると聞いています。このような実態は改善されるべきではないでしょうか。「物品」分野でも、金額をどこに設定するかという課題は残りますが、この「小規模工事希望者登録制度」の精神を「物品」分野に制度化されることを強く要望いたします。

(4)請願事項第4項目「期限を切った緊急経済対策として、全国154自治体で実施している『住宅リフォーム助成制度』を創設すること」について
 この制度については「個人の資産の形成に資するところに税金は使う事はできない」という考えがありますが、2006年9月に国土交通省が発表した「住生活基本計画」(全国計画)では、「住宅は、都市や町並みの重要な構成要素であり、安全、環境、福祉、文化といった地域の生活環境に大きな影響を及ぼすという意味で社会的性格を有するものである」としており、「個人の資産」のみの役割ではないことを明確にしています。また、この施策は緊急の経済対策として要望しているものであり、全国的にその効果が表れている施策でもあります。現在開催されている通常国会でも、1月28日の参議院本会議における市田忠義参議院議員の質問に対して、菅総理は「地方公共団体による住宅リフォームへの助成制度については社会資本整備総合交付金を活用することができ、今後ともこのような取り組みを支援していく」と回答しています。財政的な支援を得ることができる今こそ吹田市にも導入するチャンスです。
 実施していただく際は「使い勝手のよい」制度にしていただくことを切望いたします。その内容の第1は利用できる範囲を狭めることのないようにすることです。「耐震」とか「福祉」とかに限るといった条件をつけないで幅広く低額な工事にも助成対象を広げることが重要です。第2は補助金の支給や申請を簡素化することです。納税要件は制度を利用する住民にあっても工事を請負う中小業者には納税要件(「小規模工事登録制度」の項で申し上げたとおりです)を求めないことです。現在全国の自治体から熱い注目を受けているのが岩手県宮古市(資料参照)の制度です。「市内業者が元請になるような制度はできないか」という市長の意向で検討が始まったそうですが、担当課は当初、利用できる範囲を狭めて考えていたそうです。そこに、市長の「もっと汎用性のある制度に」との再度の意向が入り、それまで住宅対策で考えていた切り口を経済対策に切り替えてから「総工費20万円以上の住宅リフォームに対して、一律10万円の補助」と言う制度が誕生したそうです。市長は住民要望を良く聞き、それを担当課に指示していただいたようです。当初の予算措置は5000万円でしたが、評判がよく、6月議会、9月議会で其々1億5千万円を増額して、総額で3億5千万円にもなりました。来年度も継続されることになっています。ここで市に考えていただきたいのは、住宅をリフォームする住民の皆さんの意向が「吹田市に住み続ける」ことを前提にしていることです。恒常的な制度としてではなく、期限を切った緊急経済対策として提案していることに注目していただき、積極的な検討をお願いしたいと思います。
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