リード
吹田市は2006年に「新商工振興ビジョン」をスタートさせ、その具体化として2009年4月1日に産業振興条例を施行しました。吹田市の産業施策は、「条例」審議を本格的に展開した頃から、他の自治体の経験に学んだり業者団体等の意見を取り入れたりしながら、特徴ある施策にするための努力が行われています。吹田民主商工会は2002年以降、幾度となく文書を発表して地域経済の振興に向けて積極的な提案活動を行ってきました。
はじめに
吹田市は大阪市に隣接した人口35万人の都市です。ニュータウンが日本で初めて建設されたまち、大阪万博の開催都市です。2009年4月1日に吹田市産業振興条例(以下、「条例」)が施行されました。吹田市の産業政策は「条例」の制定前後から確かな変化の過程にあります。吹田民主商工会(吹田民商)は、この条例制定に積極的に係わるとともに、吹田市の産業政策の発展に向けて様々な提案活動を行ってきました。提案の基本は、第1に域内循環を重視した施策を展開すること、第2は中小業者を支援することです。そのためには、第3に吹田市の行政のなかで「産業振興」に対する位置づけを高める必要があると訴えてきました。2007年秋以降施策展開に変化が表れてきました。この報告は、「条例」制定前後の吹田市の施策展開と吹田民商の提案活動の推移を記したものです。
Ⅰ 条例制定の経過と背景
吹田民商が吹田市当局に「地域経済振興条例(仮称)」の制定を求めたのは1990年代半ばからです。吹田民商は年1回吹田市に対して総合的な予算要望書を提出していますがその中で取り上げてきました。また、吹田市商工業振興対策協議会(以下「協議会」、吹田民商は「吹田商工協同組合」として正式に参加)でも条例制定の要望を何度も繰り返してきました。その結果「協議会」は2002年6月27日、「商工業の振興ビジョンにかかるアクションプランへの提言」を発表して「振興条例などの策定を検討していきたい」と意思表明しました。その後、2006年3月には「新商工振興ビジョン」が策定され、その中で「行政の役割」として、条例の制定について「研究・検討を進める」と姿勢を発展させました。吹田民商は2005年9月に「吹田市新商工振興ビジョン素案(案)に対する意見」を発表し、「新ビジョン」の方向性を支持するとともに、「旧ビジョン」のように策定しただけで実行されないことがないように強く要望しました。2006年1月に開催した産業労働室との定例懇談会では「新ビジョン」推進の専門部会をつくり、そこに吹田民商の代表を参加させることを要望し了承されました。吹田民商が「条例」の制定に大きくかかわることができたのは以上のような経過によるものです。吹田市議会では日本共産党市会議員団が2001年以降毎回の議会で「条例」制定を求め続けて、私たちの運動を後押ししてくれました。
「条例」審議は2007年8月から「協議会」の下にある「施策検討部会」で始まりました。その背景には、3選を果たした当時の市長の「本社機能の誘致」や「観光」に力を入れるという公約や吹田市内の業者団体の要望がありました。商店連合会の皆さんの要望は、商店街に出店する商業者が商店会に加入しない、事業を計画しても協力しない状態が広がっている現状を、条例を制定することで「加入」や「協力」を義務にしたいという具体的なものでした。2006年12月に近隣の高槻市が「地域における商業の活性化に関する条例」が制定されたこともあり、同様の条例を制定することを求められていました。商工会議所工業部会の皆さんの要望は吹田の製造業を元気にしたいというものでした。吹田市では1990年代から製造業の事業所や工場が多数他市に移転していきます。「撤退企業を少なくし「企業誘致」も図りたいというものでした。吹田民商は商工予算が一般会計の0.5%(5億円)と少なすぎること、官公需の地元発注割合が極端に低下していること、2000年以降商工担当の幹部職員が毎年異動することの3点を改善するため「条例」を制定して市行政における「産業振興」の位置づけを高めるように求めていました。条例の制定は立場の違いを超えて切望されていました。
Ⅱ 吹田市産業振興条例の概要
(1)「条例」審議の経過と内容
条例を審議した施策検討部会(2008年4月以降は「条例検討部会」、以下「部会」)には吹田市案、商工会議所案、民商案が毎回のように提出されました。どの案も他の団体の意見を取り入れて徐々に一致点が増えていきました。吹田民商は2007年10月の「部会」で吹田市案の問題点をまとめた意見を表明するとともに、全国の進んだ条例を資料集として作成して他の委員に配布しました。11月15日には「吹田市中小企業振興基本条例(仮称)制定に向けた提言」(吹田民商のHPに掲載)を発表して、一層踏み込んで議論に参加しました。この提言は、条例の必要性や条例に基本点を明確にしたうえで、私たちなりの条例案をまとめたものです。「条例」を審議している最中の11月12日に「産業労働室」が「産業労働にぎわい部」に昇格しました。初代部長のリーダーシップで一層深い議論が展開されていくことになりました。部長は2008年2月、市、商工会議所、民商が参加した事務折衝の席上、商工業の分野だけではなく、農業や観光の分野も条例化し産業全体の振興を目指すこと、理念条例として策定したいとの考えを表明されました。民商はこの意見に基本的に了承しつつ「第1に全国的な条例制定の流れの中の条例にすること。少なくても八尾市の条例の水準を超えるものにすること。第2に市内の中小業者が参加して条例づくりを進めること。第3に今まで協議してきた内容を加味すること。」の3点を要望して了承されました。(この3点は4月の「協議会」で正式に了承されました。)その後、「部会」では商店街の活性化と加入問題、大型店と商店街の関係、コンビニ・フランチャイズ店の問題、企業の定着促進と本社機能の誘致の問題、地元優先発注や地元経済循環、小規模事業者の問題等を集中して審議しました。この間、委員の改選もあり中小企業家同友会の役員が公募委員として「協議会」委員として選出され、「部会」にも参加されるようになりました。そのことで議論に厚みが加わりました。その後、パブリックコメントと進み、3月議会では委員会も本会議も全会一致で採択されました。
(2)吹田市産業振興条例の特徴
「条例」の最大の特徴は何よりも大変民主的な討議を経て「制定」されたことです。行政が先走ることなく、住民意見を大事にして、汲み上げ尽くしてつくりあげていきました。意見の対立点については実態に基づいた討議を経て克服し一致点を形成していきました。そのため、制定に参加したすべての個人、団体の皆さんが「思い入れ」を持った条文や語句をもっています。まさに皆でつくりあげた「条例」と言えます。具体的な内容の面でも多くの積極面があります。私はその特徴を6点にまとめています。
第1は、中小企業の振興が明確に打ち出されていることです。基本理念に「産業の振興は、中小企業者の発展を基に推進されなければならない」(第3条3項)、産業施策の方針に「小規模企業者の経営の状況に応じた支援を図ること」(第4条11項)が記されました。条例の審議が開始されたころの「部会」討議は「中小企業」として括ることは「範囲を狭める」との意見が多数でした。それが討議を通して変化していきました。
第2は条例の目的に「地域経済の循環と活性化」(第1条)という表現が記されたことです。地域の経済循環を高めるための施策展開が切実に求められています。この表現は「仕事起し」運動にも励ましを与えています。この精神を基にして議論されたのが「企業誘致」でした。吹田市内の製造業が他市に移転している現状を踏まえ、吹田に企業を誘致し雇用の場を増やしたいと考えるのは自然の成り行きです。しかし、多くの都市で企業誘致が地域経済の循環に役立っていないことも事実です。このような実態を踏まえ、税金を安くしたり、特別の補助金を出したりして行う企業誘致策はとらないとの合意に達し、「地域経済の循環及び活性化に資するための企業誘致を図る」(第4条2項)となりました。
第3は産業振興を進める主体の中心に「市」(第3条1項)がすわることを定めたことです。「事業者の自助努力」や「創意工夫」(第3条2項)は大事なことです。しかし、それだけで産業が振興できるわけではありません。「条例」は「市」が主体的に「市民、事業者及び経済団体等との協働」で進めることを求めています。これは決して「(市に)してもらう」発想からではありません。吹田民商は「市」が「市民」、「事業者」、「経済団体」をつなぐ役割を果たし、其々を自立した主体に育ててほしいと考えています。
第4は「大型店」や「大企業」の役割を明記していることです。「大型店」に「地域社会における責任を自覚」(第6条3項)することを促し、「大企業」に「中小企業者との共存共栄を図る」(第6条4項)ことを求めています。また、「地域からの雇用の促進及び継続」(第6条1項)の条文は「企業誘致」や「撤退」の際の留意点を明記したものとして注目されます。
第5は市の役割として「必要な調査」や「必要な財政措置」(第5条1項・2項)を明記したことです。墨田区の条例を井内直樹先生(名城大学)から学んだ時から「調査」と「財政措置」の重要性を自覚していました。その後、様々な実態調査が実施されることになりますが、その根拠を「条例」が与えたことになります。また、第9条には「産業施策を推進するために必要な会議を開催する」「産業施策の実施状況を公表する」ことも明記されました。産業政策を推進する上で重要なのは如何にして全庁的な関心事にするかということではないでしょうか。そのため、吹田民商は市議会への報告義務を提案しましたが実現しませんでした。それでも施策の進捗状況を随時確認できると明記したことは重要です。
第6は「商店会への加入」や「(事業への)応分の負担」に「努める」(第6条2項)ことを明記したことです。コンビニなど「特定連鎖化事業」についても同様です。吹田民商は、「加入」や「負担」を求めることを条例化するに当たって、商店会等に事業内容や会計報告の必要性が生じることを指摘して、条例に基づく要項を作ることを提案しました。この提案を受けて制定されたのが「地域における商業の活性化に関する要項」と「商業者等に求められる具体的な地域貢献策の例」です。どちらもよく練り上げられた文書になりました。
Ⅲ 産業振興条例制定前後の施策展開と吹田民商の運動
(1)「条例」制定前の施策展開
吹田市の産業施策は2007年11月12日を起点に大きく変化しました。それまでの「産業労働室」が「産業労働にぎわい部」に昇格したのが契機となっています。2008年1月の市と吹田民商との定期懇談会の席上初代の部長が3点を基本方針にすることを表明されました。第1は「条例」を制定すること、第2は「JR吹田駅周辺まちづくり協議会」を設置すること、第3は就労支援組織を創設することでした。「産業労働室」の「部」への昇格を含め、この時に表明された3点は、吹田民商が2005年9月に発表した「吹田市新商工振興ビジョン素案(案)への意見」のなかで実態調査の結果に基づいて提案していたものと重なります。1点目の「条例」は制定に向けて協議が始まっており、2009年4月1日から施行されました。2点目の「JR吹田駅周辺まちづくり協議会」は地元商店街の役員が中心になって具体的な振興策を協議し実践する団体へと成長しています。イベント事業も年間サイクル化し、国の補助金を活用してミストや太陽光発電の設備を商店街へ導入する際の受け皿組織にもなりました。最近では吹田駅前に設置された有料駐輪場の管理を担い人も雇用して念願の事務局体制を確立されるようです。3点目の就労支援組織は「JOBカフェ吹田」として2008年6月に開設されました。この時には「部」を挙げて数百の事業所訪問を行い、当時の市長も事業所訪問に参加されて就労支援を要請されました。
(2)条例の具体化と吹田民商の提案活動
1 3つの要望事項の進展
2009年3月末、吹田市議会で「条例」案が全会一致で採択されたことを受けて吹田民商は①「条例」を広く普及すること、②全事業所実態調査を行うこと、③人づくり・組織づくりを行うことの3点を行政に要望しました。「条例」の普及については市内事業者に知らせる努力や地域自治会の役員に吹田市の産業実態が説明されたり市役所職員の研修会に産業振興が取り入れたりされました。実態調査は2009年度施策の重点となりました。人づくり・組織づくりの点でも吹田市主催で多様なセミナーや経営塾が開催されたり、「協議会」メンバーと協力して起業家交流会なども開かれたりするようになりました。
2 工業・起業部門の設置とビジネスコーディネート事業のスタート
2009年4月1日から「産業労働にぎわい部」に「起業・工業部門」が設置されました。吹田市では1990年代から市内にある製造関係の事業所が大量に他市に移転をしているにも関わらず放置されていた実情がありました。吹田民商もこの問題を重視して対策を講じることを求めていましたが、それが担当部局を置くという形で実現しました。同年7月1日からはビジネスコーディネーター事業もスタートしました。まず製造業の実態把握を行うことを目的にして精力的な事業所訪問が行われ600社ほど訪問され300社近い実情が把握されています。それを基に吹田市のホームページに「市内ものづくり中小企業」のコーナーをつくり順次紹介したり、セミナーを開催したりしています。「なにわの名工」にも応募し3名(2名は吹田民商会員)が表彰を受けました。小さくても元気な企業を発見したり、移転先を吹田市内に紹介したりするなど短期間で一定の成果を挙げています。商業分野では「吹田市商店街及び商店ポータルサイト事業」が開設され、観光分野では情報誌の「HOHOHO」が発行され「吹田市観光ウエブ」がホームページに掲載され「観光協会」も設立されました。
3 3つの専門部会の設置と施策の具体化
「吹田市商工業振興対策協議会」の下に「事業所実態調査作業部会」、「企業誘致・起業家支援施策検討作業部会」、「商業活性化に関する要領・要項制定作業部会」の3つの専門部会を設置して施策を検討・実施することになりました。3つの部会には、商工会議所、商店会連合会、中小企業家同友会、消費者団体、そして、吹田民商の代表が参加しています。民商は3つの部会全てに其々4名~5名の役員が参加しました。
「事業所実態調査作業部会」は実態調査項目の検討、調査結果の分析を行ない、最終的に「全事業所実態調査・調査結果」をまとめました。
「企業誘致・起業家支援施策検討作業部会」は、企業誘致の在り方として「①国や府が行っている制度について紹介し活用する②市においては税金を安くするなどお金をもって誘致することはしない。③地域経済の循環に資する企業に来てもらおう④市の魅力や地域の魅力を発信して企業を誘致しよう」ということを確認しました。また開業率が高いのに、それを上回る廃業率がある実態を直視して起業家を育成する議論も高まりました。商工会議所、中小企業家同友会、民商など組織の枠を超えた「起業家交流会」を2011年2月に開催しました。その後4か月に一回のペースで開催されています。各種のセミナーや経営塾が吹田市主催で開催され、吹田市が起業家支援に熱心であることを発信しています。
「商業活性化に関する要領・要項制定作業部会」では、商店会への「加入」問題、大型店の問題、官公需の問題など商業全般の議論が大変活発に展開されました。そして、「地域における商業の活性化のための要項」を策定し2010年1月1日から施行させました。ここには、大型店が「商業者等の受注機会の確保及び地元雇用の創出に努める」こと、「地域貢献活動に努める」ことが記されています。その後、商業者として地域にどのように貢献するかという観点で議論が展開され「商業者等に求められる具体的な地域貢献策の例」が策定されました。地域の中の商店街や市場の役割をよく自覚された役員の皆さん、それを後押しする自治体職員の熱意が大きく反映された文書になりました。
4 全事業所実態調査の実施
全事業者実態調査は2010年1月に「吹田市内の事業所に対して、調査を実施することにより、市内事業所の実態や施策ニーズを把握し、今後の施策検討の基礎資料とする」ことを目的に実施されました。岐阜県大垣市の実態調査をたたき台にして吹田の実態に合わせて検討しました。「健康状態」や「社会参加の状況」の項目もあります。調査は委託事業で行われ、2006年(平成18年)に総務省が行った「事業所・企業統計調査」のデーターを活用して実施され、7,449事業所に届けられて1,556事業所(20,8%)から回収されました。40%程度の回収を目標としていたため基礎データーとなるか心配されましたが、東大阪市の前経済部長の木村潤一さんによると「20%あれば十分」という発言を聞かせていただき安心しました。その後、「部会」で分析作業を行い、その結果が「全事業所実態調査・調査結果」としてまとめられました。
吹田民商は、この実態調査の結果に基づいて「吹田市産業振興政策への提案2011年版」(2012年6月9日発表・HP掲載)を、独自にまとめて発表しました。ここで提案した融資制度の改善や江坂地域の卸売業の実態調査は既に実現しています。吹田市の融資制度は限度額600万円、返済期間4年でしたが、これが限度額1000万円、返済期間7年に、昨年8月から拡充されました。大阪府の制度改悪が進んでいるときだけに貴重な前進です。また、江坂地域には医療機器の卸売業が集積されており、吹田市の卸売業は全国34位、大阪府内2位の実績があります。この実態を把握し、行政が後押しすることで、新たな可能性が開けないのか期待しての要望です。年度内に結果が集約されることになっています。
Ⅳ 地域経済振興に向けた今後の課題
吹田民商は「吹田市産業振興政策への提案2011年版」に於いて、吹田市の産業施策に対して①仕事を起し雇用を安定させて地域経済を循環させる②商店街・市場対策を強化する③「中小企業支援センター」(仮称)開設を視野に入れ相談窓口を充実させる④制度融資を充実させるとともに金融機関との連携を強める⑤意識的系統的な人づくりを進める⑥事業主と従業員の健康問題を重視する⑦産業施策を吹田市行政の上位に位置づける推進体制の構築等を提案しました。一貫して重視している施策は以下の3点です。
第1は循環型地域経済の基盤をつくることです。現在、吹田市では不思議な現象が起きています。新市長は「地域経済の維新」を重要な公約に掲げ、官公需の地元業者優先発注や商店街振興を表明しています。前市長の最終年には2011年度からは「物品」分野の地元中小業者発注を行うとの決断も行われました。吹田市議会は、その決断を後押しするかのように、2010年12月に吹田民商が提出した「官公需の地元優先発注、中小業者の仕事起こしを求める請願」を採択しました。ところが、改善の兆しさえありません。行政も議会も推進を表明しているのに施策が前進しない状態が続いています。大型公共事業が多いこと、「循環」より「安価」が優先されること等本質的な問題が解決されていません。この点の改善を求めていくとともに、大型店や大企業が雇用や材料等の仕入等で「条例」と「地域における商業の活性化のための要項」を遵守する働きかけを行っていくことも重要です。
第2は人づくり・組織づくりを継続して支援していくことです。今、吹田市は「起業家育成」を産業施策の柱にして動き始めています。2012年度からは「地域雇用創造推進事業」も始まり、短期間に集中的な取り組みが行われます。地元中小業者の育成は勿論ですが、長期的な視点に立った職員育成、社会教育や学校教育との連携に対する方針は未確立です。また、健康問題を通じて中小業者の実態を改善していくことも人づくりの範囲として重要だと思います。
第3は産業施策を吹田市行政の上位に位置づけることです。吹田市の産業施策は変化を見せ始めたばかりです。その大きな推進力に職員の皆さんの奮闘がありました。「条例」や商業の要項づくり等では根気よく意見をまとめられたし、国からの補助金を獲得する努力や新分野に挑む姿勢も立派です。産業労働にぎわい部の中でやれることについては着実に積み上げられてきたと思います。しかし、条例が施行され、吹田市行政の中で産業施策の位置づけが高まったかとなると疑問が残ります。来年度の予算は大幅に削減される方向で職員の皆さんの奮闘が実る内容とはなっていません。産業振興予算を一般会計の2%(現行は0,5%)に引き上げること、職員を増員すること、条例に沿って全庁的な体制を整備することが切実に求められています。
おわりに
吹田市は住民や行政、市議会の努力で比較的健全な財政基盤を構築してきました。ところが、「大阪維新の会」所属の井上哲也市長は「財政非常事態宣言」を出して住民サービスを大幅に削減しようとしています。他方で、東部拠点や万博跡地の開発計画など、既存の商業地域との連携が難しい地域の開発政策があります。これで市長が公約とする官公需の地元業者優先発注や商店街振興が進むのか危惧されています。そのような大事な時期に吹田市職員労働組合から地域経済の振興を目的とした共同の地域調査の申し入れをいただきました。大変心強い申し入れだと感謝しています。開発型まちづくりに回帰することのない住民本位の吹田市政、「条例」の精神が具体化され中小業者が地域経済や街づくりの担いとして活躍する吹田市政を目指して今後も奮闘したいと思います。
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