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運動実り吹田市産業振興条例4月1日から施行
吹田民商「いんふぉめーしょん」No.709より
吹田市産業振興条例(全文はこちらから)
 吹田市議会は、3月18日の文教市民委員会、3月27日の本会議で、吹田市産業振興条例を全会一致で採択しました。施行は本年4月1日です。
 民商は1990年代半ばから吹田市に振興条例を制定するよう一貫して要望してきました。2002年には「吹田市の産業施策立案にあたっての提言」、2005年には「吹田市商工振興ビジョン素案(案)に対する意見」を発表して提案型の運動を行ってきました。2007年に条例の審議が始まると、独自の条例案も提案して討議に積極的に関わってきました。今回制定された条例には民商が提起した数多くの文言が組み込まれています。条例の制定は10数年間に及ぶ民商運動の成果です。

 
この条例の特徴を紹介します。まず、私たちが積極的に主張し賛同したものは以下の6点です。
 第1は、条例の目的(1条)が「産業基盤の安定及び強化並びに地域経済の循環及び活性化」を図ることで「就労機会の増大及び安心安全な市民生活の確保に資する」、「調和のとれた地域社会の発展に寄与する」となっていることです。産業の振興がまちづくりの重要な要素として位置づけられています。「循環」、「就労機会の増大」の文言が組み込まれたことの意義も大きなものがあります。
 第2は、基本理念(3条)で「産業の振興は、中小企業者の発展を基の推進されなければならない」としたことです。中小企業・中小業者の発展があってこそ産業の振興が実現できることを条例で明確にしました。また、その推進の主体は「市民、事業者及び経済団体等との協働の下に」「市」が行わなければならないと責任の所在も明らかにしています。
 第3は、産業施策の方針(第4条)として、「人材の育成」や「市内中小企業者の受注機会の増大」「小規模企業者の経営の状況に応じた支援」が組み込まれたことです。地域経済の主役である中小業者の存在を条文で明らかにするとともに域内循環を高める官公需の役割を明らかにしています。
 第4は市の役割(5条)として、「必要な調査を行い、産業施策を総合的かつ計画的に推進する」としたことです。また、「必要な財政的な措置を講ずる」ことも明確にされました。私たちが条例制定とともに長年求めてきた「全事業所調査」実現の可能性が開けました。
 第5は大型店や大企業の役割(6条)が条文化されたことです。「大型店を経営するものは・・・地域社会における責任を自覚し・・・」「大企業者は、中小企業者との共栄共存を図る」と明記されています。力のある大型店や大企業が、その社会的な役割を自覚して地域住民の幸福のために力を尽くすことが切実に求められている現在、この条文の意義は高いものがあります。

 
次に消極的ですが条例制定を実現するために賛同したものは以下の点です。
 第1は、企業誘致(4条)の問題です。協議会のなかで議論されたのは製造業関係の企業が多数他市に移転していることや、空きビルや空き店舗が目立つため、ここに企業が進出してほしいというものです。吹田の良さを理解し事業所だけではなく、働く人の住居も吹田で確保して欲しいというものでした。この意見は正論です。しかし、他方で、東部拠点開発等で「企業誘致」が計画されるとの心配がありました。企業誘致即悪ではありませんが、他市の開発政策の失敗を数多く見ています。そのため、企業誘致を行う場合は「地域経済の循環と活性化に資する」ことが条件になっていることを条文で明らかにしました。
 第2は、農業と観光(4条)の問題です。この点は未知数で先が見えません。
 第3は、商店街や市場で営業する事業者の「商店会へ加入」や、活性化を図るための事業への「応分の負担」の問題です。少子高齢化社会の入り口に立っている現在、商店街や市場がもっている公共的な役割が改めて見直されています。このようなときに商店街が発展するための手助けがここにあるとの意見が多数を占めています。そのため、民商は、条文化が「まとまり」を取り戻す契機になることを期待して賛同したものです。条例の説明にあたっては、新たな「対立」を生まないように慎重に対応していただきたいと考えています。

 
条例は制定することが目的ではなく、今後、この条例に沿って施策をどのように推進していくかにあります。民商は今後1年間の施策の重点を以下の3点において吹田市当局に要望していくことにしています。
 第1は、この条例を広く市民に普及することです。特に吹田の全ての事業者に知らせる手立てをとる必要があります。
 第2は、全事業所の実態調査を行うことです。特徴のある産業施策を推進しようとすれば、実態把握が欠かせません。他市の状況も研究し、吹田の施策の基盤をつくる意気込みで取り組んでいただきたいと考えています。
 第3は、人材育成の基盤づくりに取り組む1年にしてほしいことです。産業の振興は10年後、20年後を見据えた人材育成にあります。行政担当者の育成、商工団体の役員育成、新規開業者の育成、学校教育や社会教育との連携など「人材育成」の体系づくりに取り組んでいただきたいと考えています。


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