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2012年8月9日
吹田市長  井上 哲也様
(仮称)エキスポランド跡地複合施設開発事業環境影響評価提案書についての意見書
吹田市川園町20-1
                         吹田民主商工会
                         会長  山口 正史
                        電話  6383-2211
吹田市環境まちづくり影響評価条例第9条第1項の規定により、環境影響評価提案書について、次のとおり意見書を提出します。

Ⅰ 地元住民が平穏に生活できる事業計画の策定を
  万国博記念公園内に旧エキスポランドのような施設ができ「憩い」と「にぎわい」が創出されることは多くの市民が待ち望んでいることです。しかし、今回、三井不動産株式会社が計画されている事業は、あまりにも巨大で、吹田市民や周辺自治体の住民の日常生活や環境に多大な影響を与えることが危惧されます。そのため、現計画の修正と縮小を含めて検討していただくことを要望致します。

(1)交通渋滞、排気ガス汚染等の不安の解消を
  吹田市都市計画マスタープランには、この地域の「土地利用」の基本方向として、「マンションが立地する地区では良好な住環境の保全と育成をめざします。」と記していますが、今回の事業計画は、この基本方向を配慮して策定されていないのではないかとの危惧を抱いています。
  まず、最も心配されるのは交通渋滞です。周辺住民にとっては万博外周道路が生活道路であること、大阪大学病院への通院や救急車の運行等に多大な支障がでること、通勤、通学等による渋滞が今でもあることを考えれば、これ以上の車両の乗り入れを行うべきではありません。そして、この地域の交通渋滞が吹田市全域の交通事情に大きな影響を与える可能性が大きいことにも考慮を払わなければなりません。7月15日に開催された意見交換会の際に出された地元住民の皆さんの声は当然です。そのような声が出されることは当然予測できるものです。「(仮称)吹田市立スタジアム建設事業」では、「来場車両による環境への影響を低減するため、観客の自家用車等による来場を極力減らす」ことを前提にして「新たな観客用駐車場の建設は行わない」計画です。三井不動産株式会社にも同様の姿勢が求められているのではないでしょうか。
  第2は排気ガス汚染です。この地域は自然環境を保持することに気を配ってきた地域です。それにも拘わらず、4500台収容の駐車場を整備するなど、初めから車による来場者を期待して事業計画が策定されています。この計画を実行すれば、交通量の増大や交通渋滞等によって生ずる排気ガス汚染が広がることは明らかです。子どもたちや病弱者、樹木等に与える影響をどのように考えられているのでしょうか。
  第3は営業時間の問題です。「深夜、早朝、24時間営業あり」とされていますが、これは、周辺が日常生活を行っている地域であることへの配慮が弱すぎるのではないでしょうか。照明の問題、暴走族による騒音や事故の問題など、新たな問題を誘発する可能性があります。営業時間は午前10時から、遅くても午後8時までには閉店にするべきです。この点は、環境問題だけではなく、青少年の育成上からも重要な視点です。
  第4は、樹木の保全を前提にした計画を策定するべきではないかと言うことです。「提案書」は、廃棄物処理計画の項で「工事中に発生する伐採樹木」と述べて、樹木を伐採することを前提に計画が立てられているように思われます。「万博記念公園の広大な敷地と豊かな緑は、多くの市民の誇り」であり、「保全・活用」(吹田市第3次総合計画)することこそ重要です。もし、当会の心配が当たっているとするならば、樹木については、伐採前提ではなく、「保全・活用」を前提にした計画を立案していただくことを要望いたします。検討の際には、「(仮称)吹田市立スタジアム建設事業」の「緑化計画」を参考にされることをお勧めします。
以上の4点は、三井不動産株式会社が掲げる環境理念と環境方針に沿って対応していただけば克服できるものではないでしょうか。事業計画は吹田市民が大切にしてきたものの延長線で、住民理解が得られるものを提案していただくように強く要望いたします。

(2)吹田市都市計画マスタープランや吹田市第3次総合計画に則った事業計画に
  ① 三井不動産株式会社は、事業計画の概要の項で、「吹田市都市計画マスタープランにある『周辺地域と連携しながらにぎわいのあるまちづくり』に資する施設として計画」と説明されています。しかし、吹田市都市計画マスタープランは、「万博記念公園・大阪大学地域」の「現況と特性」の項で「学術・文化・研究開発の拠点として、関係市との連携や文化的環境づくりによりさらなる機能充実が望まれています。」と記し、その上に立って、「まちづくりのテーマ(目標)」に「高度な学術・研究・文化や広域的なスポーツ・レクレエーションの拠点として、また、防災拠点としての機能や本市のイメージシンボルとしての役割を果たすとともに、千里緑地から連続するボリューム感のある緑や広大なオープンスペースを市民が身近に感じながら快適に過ごせるまち、また大学のあるまちとして、周辺地域と連携しながらにぎわいのあるまちづくりをめざします。」を掲げているものです。この文脈からも分かるように、この地域の役割の重点は、「にぎわい」の創出に力点があるのではなく、「にぎわい」の内容を「学術・研究・文化や広域的なスポーツ・レクレエーションの拠点」、「防災拠点」、「本市のイメージシンボル」等に求めています。年間2000万人もの来場者を期待した「にぎわい」ではありません。望まれているのは「文化的環境づくりによりさらなる機能充実」を図ることです。
  ② 吹田市第3次総合計画はこの地域のまちづくりの基本方向を、「大阪大学や国立民族学博物館などが立地した高度な文化、学術、研究、環境を生かし、住み、学び、働く、訪れる人でにぎわう、学びと文化創造のまちづくりを進めます。」と、「万博記念公園の広大な敷地と豊かな緑は、多くの市民の誇りとなっており、レクレエーションと憩の拠点として、訪れる人の顔が輝く交流の広場づくりを進めます。」の2点を提起しています。ここからも、三井不動産株式会社が考えている「にぎわい」の内容と、吹田市第3次総合計画が示している「にぎわい」の中身が違うことがあきらかではないでしょうか。
三井不動産株式会社は社会的地位の高い大企業です。吹田市が吹田市民と共に作り上げた都市計画プランに則った事業計画の提案を期待いたします。
 
Ⅱ 特に要望しておきたい事項
  当会は、三井不動産株式会社が、上述した観点を尊重していただき、現計画の見直しをされることを期待しています。もし、そのような対応をされない場合は、少なくても、以下の点を積極的に検討していただくことを強く要望いたします。

(1)表4・58で「太陽光、太陽熱、風力などの再生可能エネルギーを活用します。」と回答されています。この姿勢を発展させて、消費電力すべてを自給する体制を整備してください。同時に、上記の内容を「事業者の環境に対する取組方針」の中に明確に位置付けてください。
(2)渋滞対策が重要です。現状水準を維持する必要があります。特に周辺住民の日常生活に支障を与えないこと、救急車両の通行を妨げないことの2点を重点に対策を立てていただくことを求めます。そして、この点を強調するために「事業者の環境に対する取組方針」の中に明確に位置付けてください。また、工事中にも工事車両の渋滞が予測されます。その対策が表4・11に「工事関係車両の走行ルートや時間帯は、周辺道路の状況、住居の立地状況などに配慮して、一般交通の集中時間や通学時間帯を避けて設定します。」として回答されています。この位置づけを高めるために「環境取組内容」の「工事中」の項に追加してください。また、その他有効な渋滞を避ける対策があれば加えてください。
(3)午後10時以降の照明は住民生活の安寧を保障するため、場内の安全を保つもの以外は全て消灯にするべきです。
(4)この地域は広域防災拠点としての機能が期待されている地域です。この地域で事業を行う事業体としてどのような役割を果たされるのか具体的に示す必要があります。(表4・96の具体化が必要です)
(5)三井不動産株式会社は、この事業によって影響を受ける地域が山田東1丁目から4丁目に限定されているのではないかとの心配をしています。しかし、この事業の影響は吹田市全域、そして、周辺自治体住民や事業者にも大きな影響を与えるものです。影響を受ける地域の認識を変えていただきたいと思います。この点については、三井不動産株式会社だけではなく、市長に於かれても、「関係地域」を吹田市全域に広げることを要望します。少なくとも山田地域全域、ニュータウン地域、千里丘地域は「関係地域」にするべきです。そして、周辺自治体住民や事業者については吹田市環境まちづくり影響評価条例第35条に基づき適切な対応が行われるべきだと思います。
(6)三井不動産株式会社は、「当該事業における環境に対する取組方針」の項で、「本事業では、様々な主体と多様な連携・協力を図る」ことを基本理念として掲げておられます。また、「利用者、地域、行政等のコミュ二ティと連携・協力」することも謳われています。7月15日の意見交換会の際に地元住民から要望のあった「5者協議」のなかに地元住民を入れて欲しいとの要望は、この理念から見ると、行政の判断に係わらず、積極的に受け入れるべきだと思います。同時に、吹田市産業振興条例第6条第5項が示す「市内の大企業者は、中小企業者との共存共栄を図る」との趣旨に沿って、商業者の代表の参加も受け入れることも併せて要望いたします。